上司

手取り15万円からの再出発:退職した自衛官のセカンドキャリアの真実

    プレゼンテーションをしている男性会社員と女性会社員のイラスト

    自衛官の定年は一般企業より早く、60歳以下である。将官は60歳で定年を迎えるが、それ以下の階級では55歳から58歳で定年となる。このため、多くの自衛官は定年後も働く必要に迫られる。

    自衛隊には職業紹介の権限がないが、自衛隊援護協会という非営利法人が、定年退職する自衛官の再就職を支援している。定年の約1年前から自衛官は希望の職種を援護協会に伝え、担当者が適切な企業とマッチングを行う。しかし、援護協会を利用するのは全体の約7割で、残りの3割は自主的に再就職先を探したり、家業を継いだりする。

    再就職先として多いのはサービス業であり、その中でも特に警備員として働く自衛官が多い。警備員を選ぶ理由として、自衛官の多くは営業や計数管理の経験が乏しく、そのような求人も少ないためである。また、警備員の仕事は自衛官時代と同様に制服を着て、危険があれば対処するという共通点があり、心理的な抵抗が少ないことも一因である。他にも、物流や介護の分野に進む自衛官も増えており、これらの業界は人手不足のため企業側からのニーズが高い。特に北海道では農業へのニーズも高まっている。

    一方で、幹部クラスの自衛官は損害保険会社で示談交渉役として働くケースが多い。交通事故の示談交渉では、感情的になりがちな当事者に対して、自衛官として培った忍耐力や合理的な思考が重宝されるためである。さらに、元自衛官の先輩が教育システムを確立しており、それが安心して就職できる要因となっている。

    しかし、戦闘機パイロットのような特殊な技能を持つ自衛官は再就職に苦労することがある。民間の輸送機やヘリコプターのパイロットとしての道は開けているが、戦闘機の操縦スキルは民間での需要が少ないためである。

    地方に住む元自衛官にとっては、求人の絶対数が少なく、不本意な待遇での再就職が多い。例えば、東北の地方銀行で営業職に就いた元自衛官は、手取り15万円という低い給与で生活を余儀なくされ、最終的には退職してしまった。元自衛官の平均月収は20万円台前半で、30万円を超えるのは少数派である。定年時に若年定年退職給付金が支給されるため、雇用する側が「給料は安くてもよいだろう」と考えることもある。

    再就職した元自衛官の10人に1人が半年以内に退職し、4人のうち1人が4年以内に辞めてしまう。これは低賃金だけでなく、ブラック企業での過酷な労働環境や民間企業とのギャップに耐えられないことが原因である。例えば、会社役員の運転手として雇われ、土日も家族の送迎などのプライベートな業務を押し付けられるケースや、社内で正論を振りかざして孤立するケースがある。

    とはいえ、再就職後に新しい職場で奮闘し、働きがいを見いだす元自衛官もいる。最近では、起業やフリーランスとして活路を見出す人も増えている。この記事は、定年が職業人生の終わりではなく、新たな始まりとなるための覚悟と準備の必要性を強調している。

    参考:https://news.yahoo.co.jp/articles/487e4348d45b19c14efa2ea8c646b3aeefdc94d0